2月に入り新型コロナが日本にも上陸して1年が過ぎました。
もう1年経つのという実感とまだまだ予断を許さない状況が続いていますね。
景気どうこうと皆様もよくご存知のことをダラダラというのも野暮なので割愛しますが、皆様もご自愛くださいませ。
まだコロナの状況が開けるのかもわからない状況でこの春夏も自由に外出は難しいだろうなと考えていたので買い控えをする予定でした。
それよりも仕事でもテレワークが増えたこともあり自宅で快適に過ごすためのガジェットを買いそろえようかと考えアパレルはいいかと考えていました。
それが先日石田洋服店のHPを覗いていたら【号外】2021年春夏物早期ご予約プログラムというイベントが始まっていました。
これは毎年1月ころと7月ころに一部の生地を格安で販売するというもので結構掘り出し物が出品されています。通常は生地購入と同時に仕立て代を収めるのですが常連の猛者たちは今シーズンは仕立てずに生地だけを購入するというケースもあります。(さすがに新規の方は生地だけ購入は難しいと思いますが...)
そこでErmenegildo Zegna “Trofeo Linen” 86% Wool 8% Linen 6% Silk 210/220g(ベージュ、ブルーの細かいガンクラブチェック)が出品されていたのです。
ベージュのスーツを春夏に着こなすことに憧れがあったので、その週の休日に実物を拝見しに行きました。
実物を確認し店長にお話を伺うとこれらの商品は廃版になったり生地バンチが無くなる予定もなく今期の生地バンチにもあるものだけど諸事情により安くなっているとのこと。
他にもErmenegildo Zegna “Trofeo” 100% Wool 240g 無地のミッドナイトブルー、ブルー、ミディアムグレイと今回のような緊急事態でもなければ安くなるはずもないレギュラー商品までもが生地が格安で出品される異様な状況でした。(ちなみにこれらはすでに売り切れです。気になる方は石田洋服店に直接連絡して入荷できないかご相談ください。)
どうしようか迷いました。
ベージュのスーツ地はどちらかというと休日のオシャレにはもってこいの生地ですが仕事で着るには少し色が明るすぎる...ビジネス使い定番でなにかと便利な色であること、シャツの柄やネクタイを選ばず着まわしやすさでいえば無地のミディアムグレーがもっともコスパが高いのです。
しかしその時の私の頭の中には
ベージュのスーツ、ジャケット、パンツの使いまわしはどうしようかという方向ばかりに向いおり、
「メディアムグレーのスーツを休日に着るのは少し難しくないか?」
「オシャレをしたいのであればベージュが使いやすいのでは?」
というベージュで仕立てるための言い訳が頭の中をグルグル回り始めベージュで仕立ててもらうことに決定しました。
この記事はこんな方におすすめ
- フルオーダースーツに興味がある
- ファッションが好き
- オシャレとしてのスーツに興味がある
もくじ
仕立てるのは3ピーススーツ
この写真でもわかりにくいのですが生地は3つの色の糸(ホワイト、ブラウン、ダークブラウンの3色)の3者混の生地で柄は細かいチェックっぽく見えますがガンクラブチェックという柄です。
ガンクラブチェック【gun club check】
ガンクラブ・チェックとは、二色以上を使った格子の柄。イギリスの狩猟クラブで着用されたことからの由来。
日本名では二重弁慶格子。
主にトラディショナルなジャケット、パンツなどに使用される。引用元:モダリーナ
チェック柄がかなり細かいため遠くに離れると無地っぽく見えます。
その際は深みがありながらも少しかすれた夏らしい無地のベージュに見えます。
見る角度や距離によって表情を変えるおもしろい生地です。
写真では張りのある生地に見えます。これはシルクとリネン(麻)がそれぞれ6%混紡しているからです。
仮縫い
遠くから見るとほとんど無地です。
しかし平織であることとザックリとした風合、張りのある生地、薄い色が夏をイメージさせます。
生地単体で見た時には実際はもっと明るくなると予測していました。
単色の場合、色が大きくなると面積効果と呼ばれる現象が起きると思っていました。
しかし実際にはかなり落ち着いた深みのある風合いです
おそらくホワイト、ブラウン、ダークブラウンの3色の混紡のおかげでもともと明るい色の生地ではあるもののダークブランが色を引き締めているのだと思います。
※面積効果
見本などで見た生地の色が実際に仕立ててみると明るい色ならより鮮やかに、暗い色ならより暗く、見えてしまいイメージと違う色に見える現象です。
よく起こるシーンは外壁塗装などの色が大きくなれば大きくなるほど顕著に表れます。
デザインについて
生地が決定して仮縫いまでに各デザインを決めていませんでした。(上の写真のスーツと同じデザインです)
というのも私自身こういった嗜好性の強い生地で仕立てるのに慣れていませんので、ガンクラブチェックらしく英国気取りでチェンジポケット(右腰ポケットの上にもう一つポケットを付ける)にするのかアウトポケットやハッキングポケット(腰ポケットを斜めにしたもの)にするのか、ベストは襟付きか、ポケットは蓋つきにするのかなど色々イメージしました。
ビジネススーツの場合のデザインは限られますが、今回の生地のように普段着やオシャレのためのスーツというのはデザインにこだわったりできて個性を主張することができます。
ですので今回は思い切ってデザインをこだわろうか考えた次第です。
しかし実際に仮縫いが上がってみてみるとガンクラブチェックでも遠くからは無地に見え、上品なスーツに仕上がるイメージが出来上がりました。
結果、普通の仕立てに決定
デザインの詳細
ジャケット
・胸ポケットはバルカポケット(船のような形)
・スラントポケット(腰ポケットが平行)
・3ボタン段返り(ボタンを留めるのは真ん中のみで第1、第3ボタンは飾り)
・着丈は72cm
ベスト
・蓋なしの2つポケット
・前合わせはシングル
スラックス
・1タックでアウトタック
・裾幅は20cm
・ベルトループ仕様(腰部にアジャスターを付けてもらう予定)
以上のように極端なまでに普通...
ただデザインにこだわってしまうと将来的に飽きてしまうので着なくなることが考えられるのでとにかく中庸なデザインにしました。
さらに今回はErmenegildo Zegna “Trofeo Linen“というかなり高級生地ですので生地の品質と仕立ての品質とフルオーダーらしさを前面に出すためにあえて普通のデザインにしました。
こういった中庸なデザインはカッコ良くもなくカッコ悪くもなくとにかく普通ですが流行に極端に流されないデザインです。
流行を狙うと現在のジャケットの着丈は71cm、スラックスの裾幅は17cmと細いスーツが流行していますがルイ・ヴィトンやグッチなどの最先端ブランドの多くがビッグシルエットになりつつありジャケットの着丈74cm、スラックスの裾幅22cmを発表しています。
これまで極端に細いスーツが流行った反動なのか次は大きいサイズ感が流行しています。
実はこのジャケットの着丈74cm、スラックスの裾幅22cmは今から30年くらい前まではスーツの基本的なサイズ感でした...
つまり流行が1周しました...
スーツの世界も必ず流行に巻き込まれていきます。
流行の感度が非常に高いbeamsやtomorrow landなどの高級セレクトショップではすでにHevo(イーヴォ)のオーバーサイズコートやMACKINTOSH(マッキントッシュ)のコートなど2~3年前までは少しダサいというものが現在の流行です。
現状、まだまだビッグサイズが流行っていますのでこの流れは止まらないと思います。
これは私見ですが、あと5年以内には今のレディースと同じようなサイズ感になっているのではないかと思います。それなのに現在のカッコイイを取り込みすぎると5年後にはダサくて着れないなんてことが起こりえるんですね...
私は仕立てた服を破れて擦り切れてもう着れない状態にならない限りは生涯着続けるつもりですので流行のふり幅の真ん中を狙っています。
おわりに
春夏の初旬は良いのですが盛夏になると服を着ているのも嫌になります。
アパレル全体の売り上げでも春夏と秋冬では比較にならないくらい秋冬が売れます。
確かに真夏にジャケットなんか羽織りたくないですし、T-シャツに短パン、サンダルでも暑いのですから、わざわざオシャレをしようなんて気も失せてしまいます...
ですが春夏は秋冬には使うことのできない寒色やより薄い色、トロピカルや麻生地などを使うことで季節を表現できます。
オシャレの楽しみ方として春夏秋冬の季節を服で表現するのも楽しいですし、粋ではないでしょうか?
コロナのおかげで外出の機会が減り、自宅で過ごすことが多くなると合理的に考えてスーツやオシャレは意味がなく、より快適過ごすことが出来るT-シャツやスウェットにスニーカー、たまに出かけるにもスニーカーというシリコンバレーの人たちのような姿がより合理的です。
しかし人間は感情が情緒を持つ生物でなんでもかんでも合理的に処理することが出来ないものではありませんか?
合理的に不合理な判断が多いのが人間だと私は思います。
ですから、たまにする合理的でないスーツやジャケットなどを着てオシャレをするだけで気分は変わり、より日常を楽しめることがあるのではないかと私は考えます。
私自身も、仕立てる予定の無かったスーツを仕立てることになりましたが、新しいスーツをどう着こなそうか考えてはワクワクしてます。
服がわたし
今回は仮縫いとなりますので、次回は中縫いのレビューとなります。
仮縫いではザックリとデザインや着心地を見ますが、中縫いでは最終調整をします。
イージーオーダーやパターンオーダーではまず見ない中縫いです。
※たまにパターンオーダーで仮縫いをしているお店もあります。
中縫いは仕立ての8割を完成させて、着心地や細かいデザインなどの調整をするところです。
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